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新型コロナウィルスが日本全土を震え上がらせているある日の午後
僕が雇われ副社長をしている会社から呼び出しがありました。

このブログには最近登場していませんが、M子社長の会社からです。
M 子社長もすっかり社長の椅子が似合うようになり、それより女っぽくなった?(笑)

社長と僕がいつ結婚するのか、社内では噂になっているそうだが、当人同士は
全くそんな話さえしたことがないのです。

「あなた、今の状況をどう思う?」と僕の顔を見るといきなり切り出された。
「心配なのは営業の人間ですよ」「客先に訪問してもいい顔されませんよ」
「そうよね。私も同じこと考えていたのよ」

「間接部門はテレワークだから心配ないけど、
営業の人が会社の業績を担っているんだものね」
「私考えがまとまらなくてあなたに来てもらったの」

「役員はなんといってるの?」
「役員じゃなくてあなたの意見が聞きたいのよ」
「そんな怖い顔しなくても」

「呑気ね、あなたこの会社の副社長なのよ」
「前は何でもアドバスしてくれたのに、ひどいわ」
「だって、もう一人前の社長さんじゃないですか。だから、お任せししているのに」
「もう、」怒るとフグのように頬を膨らませるのは全く変わってない。

「僕が思うのは冒険すぎるかも知れないけど、営業の人間は出社しても
客先への訪問は禁止にしましょうよ」
「今の時代、電話もネットも使えるし、客先へ行かなくとも社内で十分仕事はできますよ」

もし、出歩いていてコロナ感染にでもしたら彼らの家族に迷惑がかかるし、
他の社員に感染するかもしれないし、お客様にも迷惑が掛かります。

「業績は落ちるかも知れませんが、彼らは皆営業のプロです」
「彼らを信じて今すぐにでも通達を出してください」

「わかったわ、明日の朝あなたの口から皆に話してちょうだい」
「でも、役員の皆さんには」「いいの、これはあなたと私で決めた事なんだから、
役員には口出しさせないわ」

と、いうことで4月1日の年度初めのあいさつで、昨日決まった事を
朝礼の時発表したのです。

「皆さんは本日より、外出禁止です」ピーンと張りつめた空気が一瞬固まった感じがした。

「こんな状況の中、会社の運命を担っていくのは皆さんの力にかかっています」
「私は皆さんと皆さんの家族を守らなくてはならないのです」
「いいですか?そのためには皆さんを外に出すことができないのです」
「皆さんがコロナウィルスに感染でもしたら、皆さんの家族はどうなると思いますか?」
「これは日本にとっても会社にとっても緊急事態なのです」

「でも、正直な事を言うと業績は落としてほしくありません」
「矛盾しているとお思いでしょうが、皆さんは社長と私がこの会社に就任した時、
特別に選んだ営業のプロ集団です」
「外に行かなくとも業績は落とさないで仕事のできる人達です。」
「私は皆さんと皆さんの家族は絶対守ります」「よろしくお願いします」

こんな内容の話を営業の皆に話したのです。
営業部長は顔を真っ赤にして何か言いたそうだったけど、
僕は目を合わせませんでした。

当然のように役員達からは袋叩きにあった。
「役員会も開かないで2人だけで決めるのはおかしい」
「これでは、役員の意味がない」「業績が落ちたらどう責任を取るつもりなんだ」

「営業マンの命は誰が守るんですか?あなた達が代わりに営業をしてくれますか?
他人のやった事に文句を言う前にご自分達で社員の安全を考えてください。
これ以上の選択肢があるなら教えてほしい。」
と捲し立てると皆黙ってしまった。

こんなやり方は決して良くないのはわかっているけど、
M子社長の困った顔は見たくないし、役員会なんぞやってる時間もなかったのです。

「あなた、やったわね。何年か前の人事改革以来だわ」
「やっぱり、あなたがいると安心して仕事が出来るわ」とM子社長は言ってたけど
僕のこの会社での仕事は社長のサポートと役員からの憎まれ役なのです。

どんな窮地に陥ってもこの会社を守ってみせる。
そして、社員とその家族は絶対に守ってやる。

ちょっと気合が入りすぎてしまったけど、
M子社長の安心した顔だけがご褒美かな・・・・・。