週末に日本列島を襲った台風19号。

報道番組では連日被害の様子を伝えていますが、今回の台風被害は他人事では
済まされませんでした。

台風が過ぎ去った月曜の朝、何気なく友人に電話をしてみたら通じないのですよ。
自宅へもかけてみたけど、呼び出し音はすれど応答がありません。

嫌な予感がしたので友人の家を訪ねると、まさかの事態になっていたのです。
そう、自宅周辺が泥まみれになっているではありませんか。
これ、多摩川からの水？
車から長靴を出し、家に向かうと誰もいない？

急いで百メートルほど離れた彼の作業場に行ってみると、ガレージの前で
呆然と立ち尽くしている友人の姿が・・・・・。

「どうした？」と彼の元へかけよると、シャッターの奥には泥まみれの外車が数台並んでいた。
それを無言で見つめている友人。

彼は父親の仕事を継いで自動車整備工場をやっているのです。
泥まみれの車は全てお客さんから預かった整備中の車だったのです。

彼も何か言おうとしているのだけど、言葉にならず今にも流れ出しそうな涙を
必死にこらえている。

いつも冗談ばかり言って人を笑わせる彼の顔とは程遠い別人のようです。
こんな時は何と言えばいいのだろう。いくら考えても言葉が見つかりません。
小刻みに震える彼の肩に手を置き、ただうなずくしかありませんでした。

何か慰めの言葉でも掛ければいいのだろうけど、
言葉が見つからないし、何か言っても、泣けそうで言葉にならないだろうしね。

彼の奥さんが言ってたけど、彼は明け方から食事もせず、
ずっとここに立ち尽くしているらしい。
きっと、お客さんの大事な車が水没してしまい、どうしていいのか考えが
まとまらないのだろう。

だって、ガレージの中の車を弁償すると言っても旧車ばかりだから、
同じ車はないのです。
お金で弁償するのは簡単だけど、旧車を大事にしている人達にとっては
金は要らないから同じ車を返してほしいと言うに決まっています。
そんな気持ちをよく理解しているから、どうしていいのか分からないのだと思います。

彼とは小学校の時からずっと一緒だった仲のいい友達です。
子供の頃は悪ガキだったけど、僕が芝居を辞める時も最後まで反対してくれたし、
サラリーマンを辞めコーディネーターをやると言ったら
自分の事のように喜んでくれた。

そんな彼の哀れな姿を見ているだけで涙が出そうだったけど、
ここで涙を見せると同情しているみたいだから、本当は励まさないといけないのだけど
励ます言葉が出てこないのですよ。

解決策さえ見つかればいいのだけど、こんな価値のある車を何とかしろと言われても
何ともならないし・・・・・。

力になってあげたいけど、どうしたらいいのか・・・・・。