今日の「ザ・ノンフィクション」は舞台女優としてスポットライトを浴びたい。と、
長野県から上京した女性と母親のお話です。ですが、とんでもない展開が待っていたのです。

当時18歳だった渡邊美代子さんが舞台女優を目指し長野から上京したのは
2011年のことでした。

「自分が自分でない人を演じられるのはすごい事じゃないですか?」と
上京前話していた美代子さんですが、彼女には母との間に深い心の溝が
家を出る原因のひとつだったのです。

それは、渡邊家で起きた事業の失敗でした。
借金返済に追われる日々に,母は美代子さんが中学でイジメを受けていたのを知りながら
そんな事には見向きもせず、働き続けていたのです。
そんな、母への不信感はずっと拭うことが出来なかったのです。

東京へ出てきたものの、芝居のしの字も知らない美代子さんが舞台女優になるなんて
夢また夢なのは当たり前のことです。

でも、アルバイトをしながらなんとか芝居の世界に足を踏み入れた美代子さん。
オーディションは受けても受けても、書類審査で落とされてしまう毎日。

しかし、母親は娘のためになんとか後押しをして夢を叶えてやりたいと
思っていても、娘に近づけば近づくほど母親のやっていることは空回りするばかり。
舞台の仕事もうまくいかない美代子さんはそんな母に怒りをぶつけるばかりです。

美代子さんが上京してから5年経った今でも、生活費の援助をしたり過剰なほど
応援する母親が、ある日ビッグニュースを持ち込んできたのです。

美代子さんの生まれ育った土地でご当地アイドルを募集しているというのです。
それは地元のプロレス団体がご当地アイドルを立ち上げるという話でした。

無事面接は合格しましたのですが、ご当地アイドルのメンバーは
美代子さんとは年齢の離れた中学生ばかりなのです。

23歳の美代子さんは中学生のメンバーから見れば「おばさん」です。
どう接したらいいのか、お互い戸惑いの色が・・・・・。

それでも、コミュニティーのFM局の仕事や、誰もいない屋外でのイベント
たまに地元テレビ局のニュースで取り上げられたり、それはそれなりに充実した
日々を過ごしていたのですが、美代子さんにして見れば、やはりメンバーとのギャップが
どうしても苦痛だったのです。それに、生活拠点を東京に戻したかったのです。

そして、美代子さんは、わずか3ヶ月でアイドルグループを脱退したのです。

ところで、美代子さんの母親なんですが、この方もただのおば様ではなかったのです。
家庭の事情で上京することは叶わなかったようですが、
青春時代は音楽の道を目指したかったようなのです。
歌手になりたかったの?

だから、異常なまでに美代子さんの応援するのは自分の夢を美代子さんに
かけていたのです。

カメラが久しぶりに美代子さんの元を訪ねると、そこには、ちょっとふっくらした
美代子さんと子供、子供?

そう、美代子さんはバイト先の先輩と 結婚して子供まで生まれていたのです。 

そんな子育て生活をしている美代子さんですが、東京は物価も高いし、
生活するには故郷の方がいいかと夢を諦め長野へ帰ろうとしていたら、
アイドルグループを立ち上げたいという話が舞い込んできたのです。
そう、例のプロレス団体がもう1組のアイドルグループを立ち上げると言うのです。

ところが、今度は自分がプロデュースすると美代子さんの母親にスイッチが
入ってしまったのです。

とにかくこのお母さんときたら諦めるという言葉を知らないようです。 
「秋元康のようになりたい 」と言い出したのです。
自分の娘がダメなら、自分でアイドルをプロデュースすると言うのです。

このおかあさん、定年の足音が聞こえてくる年齢になりかけているのに
これからひと旗上げようとしているのです。

ところが、人が集まらずこの企画はお釈迦になってしまうのですが、
ご当地アイドルが歌う曲作りをお願いしていたシンガーソングライターの
ライブに呼ばれ、母親の夢を叶えようとステージに母親が立っているのです。

そして、作曲してもらった曲を歌うことになったのです。
普通の人ならお断りすると思うのですが、このお母さんステージで
本当に歌い出してしまうのです。 

今回の「ザ・ノンフィクション」を観て「人間あきらめなければ
夢は叶うんだな」とメーッセージをくれた内容でした。

自分と重ね合わせると、僕はすぐ諦めちゃう方だからこういう人を見ていると
面倒な人だと思ってしまうけど、もう1人の自分は、諦めないことも大事なこと
なんだなとちょっと感動したりして・・・・。

他人様の事だからどうでもいい事なのですが、番組を観ていて、
気になった事があります。

それは、芝居を志そうとしている人間が
「努力しているけど上手くいかないんだからしょうがないじゃない」って
母親に言っていました。この時点で美代子さんは役者失格だと思うのです。

自分が努力していると思った時点で芝居はあきらめるべきです。
だって、努力を量る物差しはどこにもないのですよ。
どれだけやると努力と言えるのですか?
自分だけの物差しで努力しているなんていうこと自体が、役者を目指している
人間の言うことではありません。

芝居なんて、無限のものだし、終着点はありません。
オーディションに落ちたとしても、その役に合ってなかったのかも知れないし、
運がなかったのかも知れません。

「努力している」なんて事は絶対思っても言ってもいけないと思うのです。

芝居の世界に努力も必要かも知れないけど、
少々芝居が下手だって、その人の持っている、容姿と内面から溢れ出る
何かを訴えるオーラがあれば観ている側を引きつけられると思います。

大事なのは役を与えられたら、その役になりきれるかです。
お芝居をしようとする事が間違いなのです。
いかにも芝居をしているかのように見えたとしたら、そこで終わりです。

きっとこの番組をご覧になった方は、そう簡単に役者にはなれないんだと
お思いになられた方が多かったのではないのでしょうか。

美代子さんも役者にはなれなかったけど、人生なんて自分の思い通りにはいかないし
夢が叶わなくても、決して不幸になるわけではありません。

他人が何を言おうが今の自分が幸せならそれでいいのではありませんか?

何の仕事でもそうですが、その人の持って生まれた才能がうまくかみ合うか
噛み合わないかでその仕事が上手くいくかいかないかを決めるような気がします。

そうそう、室井滋さんの淡々と喋るナレーションが最高によかったです。 
この方こそ、芝居をやるために生まれて来たような方かなと思います。